言いたいことはあるけども、キングギドラへの愛には素直に拍手!
2019年もそろそろ終わりに近付いてますが、今年観た映画で1番を挙げるなら間違いなく今作です。
まだ見てないけど、今後Blu-rayなどで見たいのでネタバレ勘弁!って人はこのあたりで、海へ帰るゴジラのように引き返すことをオススメします。
さて、今回の「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」
個人的には大満足な内容でした。
ハリウッド版ゴジラ、3作目にしてようやく、100点に近いものが完成したなぁという感じです。
ゴジラとムートーの戦いでは、日本の特撮技術ではなしえないレベルの、非常に満足のいくド迫力怪獣バトルを楽しむことが出来ましたから。
ですが、ゴジラのバトルを楽しむことが出来た一方で、ゴジラ映画としての満足度は、とてもじゃないけど得られなかったのも事実。
それは、ゴジラ映画に対する理解度、何よりもリスペクトが薄かったようにも感じられたのです。
マグロばっかり喰ってるような奴で酷評された反省点を踏まえてか、ゴジラのデザインやイメージは非常に良いものでしたが、その設定や世界観については、あの巨大イグアナと同じ程度か、むしろそれ以上の違和感を感じました。
ゴジラの設定が、地球という惑星の守護神のような設定となり、自分から無作為に人間を襲うような存在ではなく、むしろ平成ガメラのような存在設定になっていたのです。
まぁ、この設定は今作でもまだ生きており、ハリウッド版のシリーズ、モンスターバースの世界観を深めることに一役買っていることも否めません。
昭和ゴジラシリーズにおける、ゴジラは人類の味方、いや人類の味方というわけでもなく、地球は人間だけのものではない、みんなのものだ、みんなで力を合わせて地球を守ろうではないか設定を持ってきて世界観を構築したというのであれば、こういった設定にするのが、しっくりきやすいというのもあるのでしょうけどね。
でも、前作でひっかかりを感じた最大の事項は、スタッフに果たしてどこまで日本のゴジラに対するリスペクトがあったのだろうかということでした。
確かにゴジラのデザインや存在感は日本のゴジラのそれを踏襲しており(腕も太いし、体つきもアメリカンナイズされてマッチョすぎるなぁというのはありますが)、ジラ、もといエメリッヒ監督版ゴジラのデザインの反省を踏まえているように思いました。
だからゴジラとガメラの区別もつかないまんま、ガメラの設定をゴジラに持っきてしまったんじゃないかなとも思ってもしまったんです。
大体にして、ゴジラに限らず日本の映画をちゃんと見ていたのであれば雀路羅市なんて、間違った日本観爆発の架空の都市なんて出すはずないんですよねぇ。
対して、今作の「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」では、マイケル・ドハティ監督をはじめとする製作スタッフの、日本のゴジラに対する愛やリスペクトが十分に感じられて、見ていてとても気持ちがいいものでした。
やっと日本の誇るゴジラを、ハリウッドがそれに見合う舞台へ上げてくれた、そんな気持ちになったものです。
今作を観て、何よりも良かったのは、なんと言ってもキングギドラ!
今までの日本のゴジラシリーズにおけるキングギドラに関しては、むしろ日本サイドの製作側の愛の無さを感じられることも多かったのですが、今作におけるキングギドラのハリウッドデビューに関して、製作スタッフのこの上ないギドラ愛を感じることが出来て、非常に満足のいく内容でした。
とにかくギドラが圧倒的に強大で、畏怖すべき存在で描かれています。
こんな奴に勝てるのかという圧倒的な強さ。
ゴジラでさえ、モスラや人間達の助力があったからこそ勝つことが出来たほどです。
そして誰にも操られず、縛られることのない唯一無二の怪獣としての描かれ方。
その力を持って王(キング)として他の怪獣たちをも従えてしまうその正体は、古代に侵略者として宇宙より飛来した地球外生命体との推察が劇中でなされています。
まさに「三大怪獣 地球最大の決戦」における、宇宙超怪獣キングギドラのリボーンとも言える存在感を魅せてくれます。
こんなキングギドラをずっと見たかったんだ!
こんなキングギドラを見たかったわけではなかったんだ…
待ち受けにしてもいいかもしれない。
キングギドラの3つの首のそれぞれが個性を持ってケンカみたいなことをしていたり、ちぎれた首が蛇のように再生したりといった新解釈も見られましたが、それがキングギドラ像を崩すようなものではなく、新たな設定の深みを加えたものであり、良改変と呼べるものであると思います。
個人的にはキングギドラだけでも十分に満足出来る内容の映画でしたが、今作において更にとても良かったと思える点、それが先に書いた日本のゴジラ映画へのリスペクトが感じられる点でした。
ラドンが火山から現れるのは過去作同様だし、ソニックブームで街が吹き飛んでいく様は「空の大怪獣ラドン」のリメイクのようでした。
モスラが消滅した後の鱗粉がゴジラに舞い降りて、復活とパワーアップに繋がったのは、立場が逆ですが「ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」で、モスラがキングギドラに力を与えた時のオマージュでしょう。(更には「ゴジラvs.メカゴジラ」でラドンがゴジラに力を与えた時など)
ラストの赤く発光するゴジラはまさに「vs.デストロイア」のバーニングゴジラですよね!
臨界点に達したゴジラのメルトダウン爆発によってキングギドラを倒したのも「vs.デストロイア」のラストのオマージュでしょう。
他にも小さなポイントが色々と見つけられました。
弱ったゴジラへ核兵器をぶつけて復活させようという試みは、「ゴジラvs.キングギドラ」のオマージュだと思うし、渡辺謙が演じる芹沢博士が、その自らの命と引き換えに核を起動するために1人海底に残ったのは、初代「ゴジラ」の芹沢博士のオマージュでしょう。
チャン・ツィイー演じるチェン博士とリン博士が1人2役で双子設定だったのは間違いなく「モスラ」関連における小美人ですよね。
まだ見落としている要素もありそうな気もするなぁ。
以上のように大傑作だとベタ褒めしている今回のハリウッド版ですが、それでも言いたいこと、ツッコミたいことはやっぱりあるわけで。
まずはなんと言ってもラドンですよ。
いや、カッコよく描かれてましたよラドン。
火山から登場し、ふもとの街をソニックブームで吹き飛ばしていくのはゾクゾクしました。
F22との空中戦も迫力あったし、キングギドラと嵐の中で戦うのも鳥肌ものでした。
でも、そこまでなんだよなぁ。
キングギドラに敗れたあとは、ギドラを王と認めて足下に跪いてしまうし、王であるキングギドラへの援護射撃でゴジラやモスラに襲いかかるし。
主役のゴジラ、怪獣の女王の設定だったモスラに比べると、「三大怪獣」の一角から1人脱落した感じです。
だいたいにして「三大怪獣 地球最大の決戦」の三大怪獣はゴジラ、ラドン、モスラのはずだったのに、後年にはゴジラ、モスラ、キングギドラに差し替えられるラドンの悲劇がリアルに実現されてしまった感じですよ。
あと、ゴジラ、キングギドラ、モスラ、ラドンの他に世界各地で復活した怪獣の中に前作のムートーの存在も確認できるんですが(見た目からしてメスの方だな…前作とは別の個体だと思いますが)、最後の最後、キングギドラを倒して怪獣王の座を奪還したゴジラの前にひれ伏してしまうんですよ。
ムートーって、ゴジラの体内に産卵するような、ゴジラの天敵に値する存在じゃなかったでしょうか。
そして、最大のツッコミ所はなんと言っても、“オキシジェン・デストロイヤー”!
初代「ゴジラ」の芹沢博士が生み出し、その存在に悩み、軍事運用されることを恐れ、自らの命と引き換えにたった1度の使用をもってゴジラを消滅した悪魔の平気。
同じ名前の今回の兵器はキングギドラには「地球外の生命体だから」という理由で全く効かなかったようだし、ゴジラも消滅には至らず、弱らせただけだっただけで終わったんです。
これも過去作へのリスペクトとオマージュで出したのかもしれませんが、結果失敗するような兵器にその名をつけてほしくなかった…
粗を探せば前作ほどではないにせよ、やはりたくさんのツッコミ所のある今作ですが、それでも!非常に満足できる傑作であったと断言します。
コメント
なんでやグランドギドラは強かったやろ!(モスラシリーズだけど)
後、千年竜王とかvsギドラ(コントロールなし)も一時は優位に立てただけ、ゴジラ対ガイガンとか流星人間ゾーン(ただし、正確にはゴジラシリーズではない)とかに出てきた二代目君(後者に関しては確定じゃないけど、というか、下手したら両方とも初代と同じ説もあるけど)よりはましかと、だって二代目君より明らかにゴジラタワーの方が活躍してたり(なおこれはガイガンも同様)、ガイガンを誤射して仲違いした挙げ句にゴジラとアンギラスにボコられるし、ゾーンファイターに金星で負けて再起不能になるし…
>山々さん
コメントありがとうございます!
確かに「モスラ3」のギドラは強かったですよね。
願わくば平成ゴジラであれぐらい強いギドラを見たかったと思います。
ゴジラ1匹では太刀打ちできない強すぎる宇宙超怪獣キングギドラを、日本のゴジラ映画で見たいとずっと願っているのですが…
昭和後期のギドラは完全に他の怪獣や対戦相手の引き立て役になっちゃってましたね。