「ゴジラ2000ミレニアム」がどうにも残念だった件について語ってみます。
「ゴジラvs.デストロイア」で平成vsシリーズが幕を降してから4年。
再び、ヤツが帰ってきた!
「vs.デストロイア」の後、ゴジラジュニアが真のゴジラへと成長した話を描く選択肢もあったかとは思いますが、どうやら世界観をリセットしてのお話になるとのこと。
「ゴジラの逆襲」や、84年度版「ゴジラ」のように2匹目のゴジラの話になるのか、それとも初代「ゴジラ」すらリセットして、初めてゴジラが日本に現れるような世界観にするのか、想像は尽きませんでした。
この同じ年の春には「ガメラ3邪神覚醒」も公開されてます。
「ガメラ3」は特撮に加えてCGも多用しており、前2作に引けを取らない凄まじい出来になっていまして、平成「ガメラ」シリーズの有終の美を飾った傑作でした。
東宝ゴジラスタッフも、これを意識していないわけがない。
時はまさに1999年の世紀末から2000年代に切り替わるミレニアム。
新時代の新たなるシリーズの幕開けにふさわしい、大傑作の登場を予感していたのですが…
どうしてこうなった。
今作の世界観は、ゴジラが既に当たり前に存在しているというものになってます。
ゴジラは、いわば台風のような天災に値する存在。
ゴジラをなんとか倒そうとする政府機関の他に、ゴジラの出現を予知し、被害を最小限に食い止めることで(台風の予想進路のようなもの?)、ゴジラを倒さず生物学的に研究しようという民間のゴジラ予知ネットも存在しています。
それは別に問題ないわけで。
むしろ、初めてのゴジラが出現したり、2匹目のゴジラが現れたりするわけではなく、ゴジラが既に存在している世界を描くという着眼点は良かったとさえ思います。
そして、同じくゴジラが存在するのが当たり前となっていた平成vs.シリーズの後半のように、人類とゴジラの関係が曖昧になっているわけでもなく、上陸すれば甚大な被害が出るといったゴジラの脅威が改めて描かれているんですね。
最初の、ゴジラが根室に上陸する場面は非常に良かったです。
(あとはラストのスタッフロールでのシーン)
CGも駆使した特撮に関して言えば前作「vs.デストロイア」を超えていると思います。
それでも、合成感丸出しだなぁみたいなシーンも多く見られましたけど。
世界観をリセットした一発目に新怪獣を出してきましたが、84年「ゴジラ」が初代のリブートの意味を込めていたとするなら、今作は初代の続編としての、「ゴジラの逆襲」のリブートの意味合いがあったのかなとも思います。
いきなり宇宙怪獣と宇宙人が絡んでくるのというのは最初知った時にはビックリしましたが、ゴジラの存在する世界に、全く未知の存在が絡んでくる展開と、その物語のアイデアは良かったと思うんです。
では今作の何がそこまで悪かったのかとですね…
とにかくテンポが悪い。
前作までの平成vsシリーズに関して、これまでの記事で不満点を述べることも多かったですが、一方でvsシリーズ全てにおいて良かったのはテンポの良さでした。
個人的ワーストに挙げている「vs.キングギドラ」は、テンポの良さに限って言えばゴジラシリーズ全作の中でもトップクラス。
対して今作は全シリーズの中でもトップクラスのテンポの悪さ。
一つ一つのシーンでの間延び感がありすぎるんです。
人間ドラマ全てがそうなのですが、実はゴジラ絡みでも間延び感ハンパなく。
最初の根室襲撃はとても良かったのですが、その後の茨城上陸時の自衛隊との戦闘からミレニアンの乱入まで通じて、手に汗握ってもおかしくないシチュエーションのはずなのに何故こんなに退屈に出来るかが逆に不思議なくらい。
それはやっぱり尺の間延び感があるし、一つ一つのシーンで溜めすぎっていうのがあるんですね。
ゴジラの放射熱線一つとってもそう。
今作のゴジラは一発吐くのに非常に溜めるのですが、背ビレを光らせて口の中に力を蓄えてから放出するようになってます。
この演出にかける尺がちょっと長い。
おそらく、おそらく想像ですが、平成ガメラのプラズマ火球を放つ際の演出を意識しているのではないのかと勘ぐっちゃうんですけどね。
ですが、ガメラの溜めはとてもテンポよく、プラズマ火球を放つまで「イチ、ニのサンっ!」と見ていてとても気持ちがいいものでした。
対して今作のゴジラの溜めは
初めてじゃないかな、映画館でゴジラ映画を観ていて眠くなったのは。
ただね、最後の最後、エンディングのスタッフロールにてゴジラが街を焼き尽くしていくシーンでの終幕は良かったです。
冒頭のゴジラ根室襲撃と合わせて、今作で良かったと思えるポイント。
ゴジラ映画の常として、ラストはゴジラが人間もしくはモスラなど別の怪獣にやられて終わりか、ゴジラが海に去って終わるのですが、今作では街を破壊していくゴジラをなす術なく見つめるしかないといった視点で終了していくのです。
でも、この姿こそゴジラそのものであり、人間の手に負えるはずのない厄災であると同時に人間の業が生み出した破壊の権化の姿なんですよ。
この絶望的な終幕こそが本来あるべきゴジラ映画の姿なのかもしれません。
その中身の映画本編のテンポの悪さ、退屈さがこの映画の全てをダメにしてしまった感じです。
こんなに眠くなりそうな目でゴジラを観たのは初めてだ…
ゴジラァーーーーッ!

コメント
こんばんは。
「ゴジラ2000ミレニアム」は新世紀へ向けての節目の年に公開されたミレニアムシリーズ第1作目の映画ですね。本作のゴジラはかなり凶暴ですが、あれがジュニアで無くて良かったです。対戦相手は宇宙人(が変異した怪獣)ですが、数多いゴジラシリーズの中でもゴジラが宇宙人と戦うのは本作が初めてではないでしょうか(昭和では宇宙人に操られた怪獣と戦うのはありましたけど)。
最終的に敵を倒したゴジラですが、その後は東京を破壊し蹂躙しまくるという未だかつて無かったラストを迎えます。でも、政府の不祥事がそのまま国民に降りかかる現状というのはある意味現実的であり、最後の「ゴジラは俺達の中にいる」という篠田雄二氏の言葉。この言葉を聞くと「こんな世の中、一度滅茶苦茶になって最初からやり直せば良い」という誰もが多かれ少なかれ持っている心を象徴しているのがあのゴジラなのではないかと言っているように思えてきます。
首都・東京を破壊しつくされた日本は、これからどうなっていくのでしょうか?大阪が新しい首都になるのか?23世紀でそうであったような貧乏国に生り下がっていくのか?
ともあれ、どのような時代が来ても篠田親子とその周囲の人々は逞しく生き抜いてくれるでしょうね。
http://plaza.rakuten.co.jp/achachan
こんばんは。
今作を初めて見たときは、あまりの面白くなさと期待外れ感から、「ゴジラは俺たちの中にいるんだ」というセリフも、なんやそれ!とか思っていたのですが、改めてみると深い意味を持っているような気もしました。
今作のゴジラは、人間の文明の利器に対して憎悪を燃やして破壊を繰り広げたり、ミレニアン=オルガに対してリベンジを燃やすなど闘争心豊かだったりします。
人間の業から生まれたゴジラが文明の利器を憎んで破壊するのは、文明が発展する一方で環境を破壊して行っている現代文明に暮らす人間の姿を投影している。
オルガに対してリベンジを誓って戦いを挑むのは、やられたらやり返すの精神で戦争を無くすことの出来ない人間の姿を投影している。
つまるところ、今作のゴジラは人間そのものであるということを言いたかったのかな…とか思っちゃいました。
個人的な感想ですけどね。
ゴジラが破壊するシーンで終える今作。次作以降には繋がらないミレニアムシリーズですが、こんな絶望的なシーンで終わったあとの世界はどうなってしまったのか。
ゴジラに抗することが出来ずに人類が地球を放棄せざるを得なくなった、あのアニメ映画「ゴジラ怪獣惑星」に案外繋がっているのかもしれませんね。