「ゴジラXモスラXメカゴジラ 東京SOS」ある意味、2組の親子の物語かも。

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もはや誰もメカゴジラと呼ばない機龍最終章について。

どーも、たけGです。

「ゴジラ2000ミレニアム」からスタートした新シリーズ。

一発目のタイトルからとって、一般的には『ミレニアム・シリーズ』と呼ばれるこのシリーズですが、その肝心の一発目がアレだったので平成vsシリーズと比べてシリーズ全ての低評価につながっているような気がしませんか?

それはさておいて、そのミレニアム・シリーズでは基本的に一作ごとに世界観を一新していたのですが、今作に限って前作の世界観や登場人物を引き継いだ正統な続編となっています。

前作「ゴジラXメカゴジラ」の正式な続編である今作「ゴジラXモスラXメカゴジラ 東京SOS」

ミレニアム・シリーズの各作品は世界観を一新しながらも、基本設定として初代「ゴジラ」は必ずあり、その後の物語として描かれてきていましたが、前作の「Xメカゴジラ」のみ、他のゴジラシリーズ以外の東宝特撮映画の世界観も共有しています。

それは昭和「モスラ」、そして「フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ」でした。

それらの巨大怪獣の襲撃に対抗するために結成されたのが特生自衛隊であり、究極の対抗兵器としてゴジラの骨から作られたのが三式機龍だったというのが前作のお話。

(余談ですが、裏設定によると他の東宝特撮作品の世界観も数多く共有しているらしいのですが、「妖星ゴラス」とか「地球防衛軍」とかはさすがに無茶ではないですか?)

そんな世界観を共有している作品が、今作でまた一つ明らかになりました。

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カメーバ参戦!

参戦、って言うか、既に戦った後の死体が「ジョーズ2」のシャチのように浜辺へ流れ着いたものなのですが、どのような形にしろ、ゴジラ映画にカメーバが登場するだなんて、誰が想像したでしょうか。

カメーバは昭和の頃の東宝特撮作品、「ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦!南海の大怪獣」に登場した、亀に宇宙生物が寄生して巨大化した怪獣です。

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ゴジラでもない、モスラでもない、まったくの新規の怪獣だけで1本の映画を作れるとか、いい時代だったんだなぁ。

この打ち上げられたカメーバの致命傷になったと思われる引っ掻き傷のようなあとを見て、その犯人を「例えば、ゴジラ」と、現在行方が知れないゴジラが近海にいることを推測するのですが、誰もガニメだとは推測しなかったのでしょうか?

って言うか、この打ち上げられた死体がガニメでも、ゲゾラでもなく、亀の怪獣カメーバが選ばれたことについて、何か意図的なものもあるような気がするのですが…

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「カメーバですね!」

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「もっとマシな命名の仕方はなかったのか」

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さて、今作は前作の正統な続編につき、前作から引き続き、機龍の存在の意味を問う物語になってます。

機龍は果たして存在してはいけないのか。

インファント島の小美人から、人間は死者の魂に手を触れるべきではないと忠告され、ゴジラの骨を海に返すべきだと忠告されます。

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今や大女優の長澤まさみさんが小美人を演じていたんですねぇ。

長澤さんの背の高さが目立ってしまっている、歴代の小美人中1番アンバランスな組み合わせでもありますが。

前作で、その存在を疑問視されながらも、どんな理由があろうとも生きていてはいけない命などないとの結論に着地した機龍。

その前作において、ともに生きる意義を見出した前作主人公の茜は、「機龍はもう戦いたくないのかもしれない」と言います。

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このまま修理されずに静かに眠りにつくことを望んでいるのではないかと。

しかし、そんな様々な思いとは裏腹にゴジラは再び上陸。

おそらくは同じ遺伝子を持つ機龍に惹かれて。

機龍を眠らせるかわりにとモスラが飛来し、ゴジラに立ち向かうも、圧倒的なゴジラの前に次第に追い込まれるモスラ。

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それを見た五十嵐総理は、「我々のために戦ってくれている者を見殺しになど出来ない!」と、機龍の発進を指示。

再びゴジラと戦わざるを得なくなる機龍。

親を殺された2匹の幼虫モスラとの連携もあり、遂にゴジラを追い詰める事に成功。

モスラの糸に絡めとられ、身動きがとれなくなったゴジラの悲しげな咆哮を聞き、前作の序盤のように自我を取り戻す機龍。

その際のエネルギーの伝達は、まるで血の涙を流しているかのよう。

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再び人間によるコントロールから離れ、暴走するも、あの時のように暴れ回るのではなく、動けなくなったゴジラを抱えて飛び立つのです。

まるで我が子を抱き抱える母親のように。

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そして、整備士の義人に別れを告げ、海底の奥深くにゴジラとともに沈んでいくのです。

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誰にも妨げられることのない、深い眠りにつくために。

前作は機龍=メカゴジラの命の物語でした。

対して今作はおそらく、機龍=初代ゴジラの意思が一つのテーマ。

生きていてはいけない命などない。

確かにその通りですが、その生き方を他者が強要するべきではない。

機龍はゴジラと戦いたくなどなかった。

ただ静かに眠りたかっただけ。

小美人も機龍に死を与えるべきと言っていたのではなく、機龍の、初代ゴジラの意思に反して蘇らせた人間のことを非難しながら、その間違いを正してもらおうと、ゴジラの骨を再び眠りにつかせることを願ったのでしょう。

そうして、ゴジラとともに再びの眠りにつく機龍、初代ゴジラ。

五十嵐総理が、「我々は間違いに気づき、それを正すことが出来る」と述べ、小美人も2匹のモスラとともにインファント島へ戻ってハッピーエンド。

かと思いきや、エンドロールのあと、どこかの研究所のような場所にて、ゴジラのDNAに関する研究が続けられているような描写で物語は幕を閉じます。

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人は、間違いを正すことが出来る一方で、過ちを繰り返してきた歴史もまたあります。

第2、第3の機龍、もしくはそれに代わる兵器を生み出そうとしているのか。

それによって機龍とともに眠りについたはずのゴジラがまた自身と同じ遺伝子に惹かれて上陸してくることになるのではないか。

「邪聖剣ネクロマンサー」のエンディングが思い出されそうな、とても後味の悪いエンディングで機龍の物語は終了となります。

公開当時、実は、これは機龍3部作なのではないかと勝手に想像したもんです。

次は「ゴジラXキングギドラXメカゴジラ」で、最後は自分の意思で復活した機龍がゴジラとともにキングギドラを撃退したあと、その研究所を巻き込んでの自爆とかするんじゃないかとか、勝手な妄想膨らませたんですけどねぇ。

ま、そんな展開にはなりませんでしたが。

そんな今作。

初代「モスラ」をも絡めた話はよく練られており、とても面白く見ることが出来ました。

前作同様、「ハム太郎」との併映で上映時間が90分程度と短いなかで、とてもコンパクトによくまとめたなぁという印象です。

なにせ、今作のゴジラは一回上陸したのみ、恒例の再上陸後にラストバトルといった展開ではなく、ゴジラが上陸したらいきなりメインイベントになります。

今作のモスラはとても良く、平成3部作を含め、平成の世に出たモスラの中では造形も、動きも1番良く出来ています。

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vsモスラのようにビームを出すこともなく、前々作のようにゴジラに対してなす術がないなんてこともなく、メガギラスと同様にゴジラ相手に立体的な戦闘を繰り広げます。

機龍ことメカゴジラとの初めての共演にして共闘も良かったですね。

機龍を否定しつつも、機龍が出撃してきたのは自分を助けるためということを理解しているようでした。

(その後で小美人が機龍の修理に向かう義人を助けたのも同様)

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東京タワーだけは、あえてゴジラに破壊させたように見えなくもないんですけどね…

親モスラが倒れた後で双子の幼虫モスラが生まれるのは間違いなく「モスラ対ゴジラ」のオマージュでしょう。

今作の世界観では初代「ゴジラ」から初代「モスラ」を通ってはいるものの、「モスラ対ゴジラ」の話は無かった世界なので、同作のリブートも兼ねているのかもしれません。

「モスラ対ゴジラ」との違いは、今作において双子モスラが上陸した際には、親モスラはまだ存命しており、双子が親と対面出来ることにあります。

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しかし悲しいかな、親モスラは我が子を守るため、自分の身を盾にしてゴジラの放射熱線を浴び、我が子等の目の前で焼失してしまうのです。

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お母さーーーーん‼︎

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あれは王蟲の攻撃色!

母の仇に燃える双子は、機龍とも共闘し、遂にはゴジラを追い詰めます。

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昭和の頃から思っていたのですが、モスラは幼虫の頃が最強なのではないでしょうか?

しかし、その母の仇のゴジラのトドメを刺さずに抱き抱えて飛び立つ機龍を責めようともせず、怒りの瞳の色も消え、ただ見守る双子モスラ。

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ゴジラを抱き抱える機龍の姿に、自分たちを守って死んだ母の姿を重ねて見ていたのかもしれません。

ここまで、今作についてシリーズ屈指の大傑作のように書いてきましたが、本当に傑作か?と問われれば、ウーン…な感じで。

いや、面白いのは間違いないし、好きか嫌いかで問われれば好きな作品ではあるんですけどね。

今回、久しぶりに改めて見ても楽しめましたし。

ただ、もっと好きだった前作に比べるとなにかいろいろと物足りないと言いますか。

コンパクトにまとまってテンポはとても良いのですが、コンパクトにまとまりすぎている感があるんですよ。

特に人物描写が前作以上に描ききれてない印象。

機械オタクで機龍に寄り添う主人公、義人は良く描けており、機龍が心を通わせたのもわかるのですが、機龍と同じ苦悩を抱えて生きる前作の茜に比べるとちょっと弱い。

機龍を操縦するメインオペレーターの秋葉も、最新鋭の機体に乗りたいというだけで機龍をコントロールしているので、機龍と心を通じ合えるわけがないんですよねぇ。

やっぱり機龍の物語の最終章なら、前作主人公の家城茜がそのまま続投するべきではなかったかなぁ。

序盤早々に、機龍のことを義人に託してアメリカへと旅立っちゃうのですが、今作でも機龍とともに戦い、機龍の痛みを知って、最後に機龍が在るべき場所に還ることを見届けた後で、茜も自分の行くべき場所へ旅立っていくというラストだと、もうちょっと物語も良くなったのではないかと思います。

「SAYONARA AKANE」を機龍から送らせたかったなぁ。

他にも、機龍反対派でモスラを利用しようとする政府内部勢力の動きなど、上手く描けば盛り上がりそうなパートも、物語が短いので上手く組み込めていない印象。

コメント

  1. マルゲリータ より:

    たけGさん、初めまして!
    私も親父ぃの影響もあってゴジラ大好きで、何作がみました。
    この映画、機龍がとにかくかっこよくて好きな映画なんですが、興行収入がワーストだそうでびっくりしました。
    モスラも華が合って、強さも出てたし、機龍のバトルも熱かった。決着の付け方もどっちが勝つじゃなくて、
    共に深海で眠るというのが素敵で、戦うことで終わらないところがすごく刺さりました。
    どこがどう悪いんだろって思ったのですがたけG さんのおかげで、少しスッキリしました。
    確かにバトルはよく覚えてるけど、ストーリーはあんまり覚えてないなって…
    確かに尺の問題もあると思います。長ければいいってもんでもありませんが、
    コンパクトに収まりすぎて考えたり、感じる間がないのも良くないですし。
    これからも、コメント投稿させてもらいます。

  2. たけG より:

    >マルゲリータさん
    初めまして!
    コメント、ありがとうございます。
    僕も機龍が好きでこの作品も好きだったのですが、もう少し上映時間があればもっといい作品になったのではと思ってしまいます。
    この当時はゴジラ映画そのものが下火だったので全盛期とも言える90年代のvsシリーズの興行成績と比べると数字はどんどん下降してました。
    そう言ったことも含めて「とっとこハム太郎」との同時上映することになり時間も短くせざるを得なかった事情もあったとは思うのですが…
    この作品の興行成績の結果、次作でシリーズ終了となったのは悲しかったです
    今の時代なら、もっと評価されそうなんですけどね。
    またいつでも遊びに来てください。

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