こんなに奇妙で、サイケデリックで、なのに心に響くゲームは他にないと思う。
かつて初代プレイステーションで購入し、遊んでみたもののやり遂げずに途中で投げ出してしまい、中古で売ってしまったソフト。
「クーロンズゲート 九龍風水傳」
発売前から雑誌で大々的に宣伝されており、アジアンゴシックとでも言うべきそのサイケデリックなビジュアルに心惹かれてはいたのですが、発売時にはスルーしていました。
当時は「ファイナルファンタジー VII」や「悪魔城ドラキュラX月下の夜想曲」、「レイストーム」といった、個人的に買いが確定していたソフトと時期が被っており、さらには「スターフォックス64」や「ファイナルファンタジー タクティクス」もその後に控えていたこの時期(思い返すと97年ってすごい良作ラッシュだったんだなぁ)、ビジュアルに心惹かれただけの新規タイトルを購入する余裕はありませんでした。
その上、購入した職場の後輩から、「あまり面白くなかったからすぐ売った」みたいな評価も聞いてしまたもんで、買いたい意欲も削がれてしまったわけなんですよ。
そんな「クーロンズゲート」を購入したのはそれから数年後のこと。
もうPS2が出る出ない言っていた頃ではなかったでしょうか。
中古ショップで安く売っているのを目に止めて、確か980円程度だったかな、その時ちょうど遊んでいるソフトもなかったし、これぐらいの値段だったら買ってみてもいいかぐらいの気持ちで購入しました。
購入し、即遊んでみたのですが、まずその世界観にやられてしまいましたね。
歩いて誰かと話すだけで楽しかった。
雰囲気、そう、雰囲気だけは最高のゲームでした。
写真でしか見たことのない九龍城を、実際に歩いているかのような雰囲気がたまりませんでしたねぇ。
廃墟やスラム街の写真などを見るのが大好きなので、最初は本当に感動が勝っていたことを思い出します。
ま、根はビビリなもので、実際に行ってみたり、住んでみたりすることなんて絶対に無理ですが。
だからこそ、ファンタジーとしてのこの世界にベタ惚れしたのでしょうね。
ですが、遊んで進めていくうちに作品としての雰囲気の素晴らしさよりも、ゲームとしての煩わしさの方が勝っていくようになっていきまして。
遊びこんでいくうちにわかってくるのですが、ゲームとしては正直そんなに面白くないことがわかってきます。
クソゲーはさすがに言い過ぎですが、ゲームという1つの商品として見ると、他に面白いゲームはいっぱいある。
僕のように雰囲気ゲームとして楽しむことが出来なければ、まず楽しくないことだらけかもしれません。
このゲームで行うことを一言で表現するとすれば、“作業”の二文字につきます。
ゲームの舞台となるダンジョンは2種類あり、一方が様々に奇妙で奇天烈な住人たちが暮らす九龍城の探索を行うJPEGダンジョン。
自由に歩き回ることは出来ず、定められたポイントからポイントへ移動するスタイルです。
同じようなゲームで言えば「MIST」か、セガサターンの「月下霧幻譚〜TORICO〜」といったところでしょうか。
CGで描かれた美しくも退廃的な九龍城を移動してとにかくフラグを立てていく。
住人から話を聞く、アイテムを入手するなどしてフラグを立てなければ次の展開には進めません。
とにかく歩いて、歩いて住人達の話を聞いていく。
同じ住民と何度か話をしては新たな話題が出るかと思えば、変わらず同じ話しを繰り返すしかないような事もある。
マップの端から端まで何度も行き来してもフラグが立つ気配がなく、住民1人1人聞き逃しがなかったかと総当たりしていく。
そうやってフラグを立てていく、ある意味古典的なアドベンチャーゲームとなってます。
「オホーツクに消ゆ」や「ファミコン探偵倶楽部」といった総当たりでフラグを立てていく昔のアドベンチャーゲームが大好きだったので、この点はそんなに苦痛ではありませんでしたが、それを煩わしく感じる人には絶対に向いてないシステムです。
そうやってフラグを立てるうちに胡同(フートン)と呼ばれるダンジョンに入れるようになるのですが、これがもう一方のリアルタイムダンジョン。
主観視点で移動するこのダンジョンは、同じようなゲームを挙げれば「キングスフィールド」や、「BASTARD!〜虚ろなる神々の器〜」といったところ。
ダンジョンはフルポリゴンで描かれてます。
美麗なCGで描かれたJPEGダンジョンと違って、PS1らしい今となっては拙く荒いグラフィックですが、それだけに暗い廃墟の雰囲気を醸し出してます。
ですが、見た目や雰囲気はともかく、このリアルタイムダンジョンでも行うことはとにかく“作業”です。
人を探す、物を探す、邪気を払う、そんな作業を行いながら広大なダンジョンをひたすら歩いて彷徨う。
これが結構苦痛で。
僕がかつてのPS版でのプレイが挫けてしまったのは、このリアルタイムダンジョンの探索部分が大きかったと思います。
正直言って、だだっ広いダンジョンを歩き回るのがとっても面倒くさい。
そしてこのゲームには戦闘もあるのですが、この戦闘が正直言って面白くない。
相手の属性がわからなければターンを消費して見極める。(失敗することもあり)
また、相手の属性を吸収することでも相手を消滅させることが出来ます。
なんだ、それなら全ての敵から属性を吸収していけば楽勝でしょ、と知らなかったら思われるかもしれませんがそんなに簡単にはいきません。
このゲームにおける属性は土金木火水の5種類なのですが、1種類の属性につき1つしか所持出来ません。
例えば火の属性の鬼律に遭遇した時に既に火の属性を所持していたのなら、吸収することは出来ないんですね。
そして火の属性と相克している水の属性を所持していない場合はもう逃げるしかないのです。
鬼律玉というどんな属性の敵にも通用するアイテムがあれば消滅させることができますが、このアイテムはここぞという時に使いたいので、その場は逃げて相克する属性の邪気を探しに行った方がいいです。
なんだ、戦略性あって面白そうじゃん、と思われる方もいるかもしれません。
実際、最初のうちは、おお、風水ってこんな感じかぁと楽しんでいれた記憶もあります。
ですが、繰り返すうちにホント、作業と化して言ってただただ苦痛なんですよ。
RPGと違って成長要素があるわけじゃないので、いつまで経っても風水バトルで切り抜けなければならない。
序盤に会った敵と久しぶりに遭遇してもワンパンで倒せるはずもなく、相克する属性の邪気をぶつけて消滅させなければならないのですが、久しぶりに会ったのでその敵の属性なんて覚えてないわけで。
なのでまず属性をサーチするところから始めなければいけないんですね。
非常にメンドくさい。
ドラクエだったら久しぶりに会ったスライムなんて「たたかう」コマンド連打で行けるのに。
属性の違いこそあれ、どんな敵であってもやること全部同じなんですね。
成長もしないからカタルシスも何もない。
この戦闘さえなかったら…と、そのうち思うようになっていったわけなのです。
一度倒した敵は復活せず、邪気を一掃したフロアではエンカウントしなくなるのが救いといえば救いでしたが。
リアルタイムダンジョンもう一つ、そして最大の問題がセーブポイント。
このゲームでは中断セーブの機能はなく、クーロネットと呼ばれる端末でセーブする必要があります。
一度、リアルタイムダンジョンに入ってしまうと、なかなかセーブポイントが見つからず、延々と彷徨い続けなければならないことも多くって。
今日はそろそろやめよう思っても、やめることが出来ない問題に直面することがしばしばなんですね。
これはJPEGダンジョンにおいても、DISCチェンジして新たな街へ行ったりすると、フラグを立てなければセーブできる端末が存在する場所に行けない問題も発生します。
この、なかなかセーブできない問題が気軽に遊べるゲームでないという意識につながってしまって、戦闘の面倒臭さも手伝って、そのうちにこのゲームを立ち上げることすら億劫になっていってしまったわけなんですよ。
そんな理由で好きな雰囲気のゲームではあったけど、遊び続けることが出来なくなった「クーロンズゲート」
たまたまYouTubeでプレイ動画を見たためか、続編のプロジェクトのサイトを見たこともあったためか、無性に久しぶりに遊びたくなりました。
Amazonで探せば安い中古のソフトもあるかもしれないけど、購入したら押し入れの奥からPS2を引っ張り出さないといけない。
それならゲームアーカイブス版を購入してPSPで遊べばいいじゃない!
僕にはPSPという素敵なハードがあるじゃないか!
この購入に至る経緯が、まさかまさかの大変な事態になるだなんてその時は思いもしませんでしたが…
これは語るとただでさえ長い記事が更に長くなるので詳細は該当記事にて。
そんなわけで、少々複雑な経緯を経て、ゲームアーカイブス版の「クーロンズゲート」を購入!
PSPで久しぶりに遊んでみた「クーロンズゲート」ですが、やっぱり雰囲気が最高!
禍々しくネオンが煌めく、暗く陰鬱とした九龍城。
相変わらず変な人しかいないし変な事しか言わないし。
現実では今年の帰省をやめたので、20年前にやり遂げずに捨てた故郷へ戻ってきた、そんな気分?#クーロンズゲート pic.twitter.com/3QKnjScYuh— たけG (@heaskit) December 27, 2020
ああ、昔確かにそこにいた、この街に帰ってきたんだなぁとちょっと感慨深くなりました。
そして、今回改めて、かつて挫折したこのゲームをPSPで遊んでみて思ったこと。
このゲーム、PSPに向いている!
この事実は本当に声に出して言いたい!
いや、VITAでもいいとは思いますが、携帯機であるPSPで遊ぶことによって、テレビ画面で遊んでいた頃の煩わしさがかなり軽減されているんですよ。
JPEGダンジョンでの移動は、僕は嫌いではなかったのですが、それでも同じ場所同じ風景を何度も何度もゆっくりゆっくり流されると時に面倒だなぁとか思うこともありました。
ですがPSPで遊んでいると、画面が小さいためか移動の時間が短縮されているようにも感じるのです。
錯覚かもしれないですけどね、ダウンロード版ということで読み込み等もかなり軽減されているようにも感じられるんですよ。
それはリアルタイムダンジョンでも同様。
あれだけだだっ広くて歩くのも面倒だったリアルタイムダンジョンも、心なしかPSPの小さな画面内だとそこまで広く感じません。
そして何よりの利点が、中断のしやすさ!
PSPにはスリープ機能があるから、いつでも、どんなタイミングでも中断することが出来るわけなんですよ!
こんなお手軽に、「ちょと遊んでみようかな」的な感じで面倒臭さの極致だった「クーロンズゲート」を遊べるだなんて。
ホント、PSPのゲームアーカイブスって最高だなぁ。
この声、SONYさんに届かないかなぁ。
PCやスマホでゲームアーカイブスソフトを購入できるような仕組みを、もう一度考えてもらいたいと切に願います。
まぁ、今回の「クーロンズゲート」のような重厚な大作ソフトを携帯機で気軽に遊べるようになったことって、かつて分厚いハードカバーの本を購入したものの持ち歩きにくさから読むのをやめてしまった文学を、文庫本で買い直して気軽に読むことが出来るようになった。
そんな感じでしょうか。
おかげで気軽に快適に九龍城の街並みを歩き回り、奇天烈な住人達とのコミュニケーションを楽しむ毎日です。
なんだかこちらの頭の中まで犯されてしまいそうな強烈な人たち。
ですがこの辺のサイケデリックな世界観がたまらないんだよなぁ。
小黒ちゃん、昔はこの子が主人公だと勘違いしてましたよ。
プレイヤーがこの人だとばかり思っていたから、ゲーム内で出会った時には驚いたもんです。
パッケージが悪いんだパッケージが。
こんな人が路地に普通に立ってます。
実際には絶対に歩けないスラム街をあるいている感覚。
っていうか最初は誰もいなかったのに振り返るとどアップで住人が出てきて、心臓に悪いようなこともよくあります。
PS版を遊んだのって20年近く前だもの、そりゃあ忘れていますよ
PS版は煩わしさが強く、ストレスも多いゲームでしたが、PSPで遊ぶゲームアーカイブス版は非常に遊びやすくなってると感じます。
リメイクされてるわけでもないはずなんですけどね、中断セーブのしやすさを筆頭に、PSPの機能によって遊びやすさが向上したと言えるでしょう。
僕のようにかつて煩わしさからPSで遊ぶことをやめてしまった人にはPSPでもう一度遊ぶことを推奨できます。
PS3でも遊べるとは思いますが、今のこの時代に「クーロンズゲート」を遊ぶならPSP(もしくはVITA)で遊ぶのがいいですよ!
数ヶ月前の僕のようにPSPしか持ってない人だと、これからゲームアーカイブスのソフトを購入するのはかなりハードルが高くなってますが…
VITAユーザーなら是非、VITAで遊んだ方が良いと言えます。
まぁ、元々のゲームが人を選ぶゲームであるので、万人に勧められるわけではないですけどね。
PSPやVITAで遊ぶことによって戦闘まで面白くなってるわけではないし。
(戦闘の面倒くささは変わってませんが、中断することが出来るようになっているのでストレスは軽減されていると思います)
廃墟好き、変なゲーム好きな方にはオススメのタイトルです。
動物が好きな方にはちょっとオススメしかねますが。
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